多くの企業が、リモート ワークによって必ずしも仕事の質が下がるわけではないと考えるようになってきています。しかし、これは、リーダーはリモート チームを正しく構築する必要があることを意味します。
リーダーは、チーム メンバーが緊密に連携して、効率的に、最高のパフォーマンスを発揮できるリモート環境を構築することが求められます。この目標を達成する方法は多く存在しますが、リモート チームに特に有効で、アジャイルなフレームワークがあります。このフレームワークによって、チームは小さくとも消費可能な単位で作業し、プロセスと計画に対応する適応性と柔軟性も確保できます。
アジャイル手法は、長年、ソフトウェアの世界の主流でした。また、リモートに移行する企業が増える中、アジャイルはあらゆる業界で注目を集め始めています。
アジャイル手法とリモート チームにとってのメリットについて関心がありますか?
リモート ワークの専門家であり、『リモートワーク——チームが結束する次世代型メソッド』の共著者の 1 人である Lisette Sutherland 氏に、リモート チームが作業の連携と効率の改善にアジャイル プラクティスをどのように活用できるかについて尋ねました。
アジャイル手法とは?
まず、リモート チームを成功に導くアジャイル プラクティスの活用方法について説明する前に、アジャイル手法の基本について簡潔に説明します。
アジャイル プラクティスでは、全体的な目標にフォーカスしたり、長期的なアプローチで仕事をしたりするのではなく、プロジェクトを「スプリント」とよばれる短いイテレーションに分割します。通常、スプリントの期間は 1 週間から 1 か月で、チームは必要な作業、達成する必要がある事柄、その時期について明確な目標を持てます。
アジャイル チームのまとめ役またはリーダーは、「スクラム マスター」と呼ばれます。毎朝、スクラム マスターは、チーム全体で状況の理解を共有するクイック チェックイン (「スタンド アップ」と呼ばれます) を開きます。スプリント終了時に、チームはレトロスペクティブ (「レトロ」) と呼ばれるより詳細な会議を行い、スプリントを振り返り、今後の改善点を確認します。
そして、次のスプリントでフォーカスする目標とタスクを選択し、同様の手順を繰り返します。
アジャイル フレームワークは、さまざまなチーム構造に対して効果的です。最も有効なのは、リモートの職場です。なぜなら、リーダーは、何が上手く行っていて、何が上手く行っていないのかを素早く把握し、リアルタイムで変更を加えられるからです (これは、分散したチームにおける効率の維持には特に重要です)。
Sutherland 氏は、「アジャイル手法は、作業の速さ、学習の速さ、反復の速さに重点を置いています」と語っています。
アジャイルがリモート ワークに効果的なフレームワークであることは明らかです。そこで問題となるのは、リーダーとして、アジャイル プラクティスをどのように活用してリモート チームの効率、生産性、連携を改善するかという点です。
アジャイルでチームを 1 つにまとめる
Sutherland 氏によれば、アジャイル プラクティス採用時の最大の失敗の 1 つが「最初から急ぎすぎること」です。Sutherland 氏は、「大事なのは変更管理プログラムです。リモート (ワーク) の導入は組織の文化の変革であることが認識されていないように感じます。働き方を変え始める必要があるのです」と語っています。
そのため、アジャイル プラクティスの導入を開始する前に、全員で認識を共有することが重要です。

Sutherland 氏は、「私は、チームで合意を得ることから始めることを推奨します。皆で腰を据えて次の事項を書き出してみましょう。どのようにコミュニケーションを取るのか? 何にどのようなツールを使用するか? どこで情報を共有するか? セキュリティ プロトコルはあるか? どれぐらいの応答時間が想定されるか?」と述べています。
想定を明確にしてチームが将来のワークフローの変化を理解し、その準備をする時間を取ることで、アジャイルへの移行がよりスムーズに進みます。
Sutherland 氏は、「基本的な事項の一部に過ぎませんが、まず、それを行うことで、アジャイル会議 (およびプラクティス) がうまくいきます」と語っています。
リモート チームを適切なツールで強化する
あらゆる新しいプロセスまたはシステムと同様、リモート チームでこの新しい働き方と連携を成功させるには、成功するために必要なツールをチームに提供する必要があります。
Sutherland 氏によれば、アジャイル プロセスを使用する予定のリモート チームにはすべて、最低でもいくつかの基本的なツールである「グループ チャット、ビデオ、何かしらのタスク管理システム」を必要とします。
リモートで作業しているため、チームがどこからでも連携できるツールに投資することも重要です。Sutherland 氏は、「小会議室の使い方を学びましょう。ホワイトボードの使い方を学びましょう。オンラインでの描画とデザインの共有方法を学びましょう」と語っています。
必要な追加ツールは、チーム、取り組んでいるプロジェクト、目標によって異なりますが、最終的には、分散したチームにおける接続、連携、効率を改善するツール一式を導入する必要があります。「チームはそれぞれ異なり、プレゼンスの作り方と必要なものは人によって異なります」と Sutherland 氏は語っています。
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アジャイル会議プラクティスの導入
チームが効率改善のためのアジャイル プラクティスの採用とリモート ワーク一般の両方において成功するためには、会議が必須です。
しかし、アジャイル フレームワーク全体で重視されるのは速度と効率であるため、成功するためには、リモート会議の質の向上が必要です。Sutherland 氏は、「課題は会議の質です」と述べています。
以下に、アジャイル会議プラクティスを導入し、リモート チームで会議を最大限に活用するための、ヒントを示します。
1. 技術的課題への対応
会議の計画をどれだけ練ろうと、チームがどれだけ準備していようと、適切な技術がなければ、会議の効果は下がり、より時間もかかり、退屈な会議になります。
Sutherland 氏は、「[会議] の時間が 10 分程度という想定において全員が基本的な技術と格闘しているようでは、仕事は捗らないでしょう」と語っています。
最初のスプリント (およびそれに付随する会議) を開始する前に、チームとテストを行って、全員の技術が上手く機能することを確認しましょう。画面共有、ビデオ会議など、会議中に使用する必要があるすべての機能をテストしましょう。課題が見つかったら、スプリントを開始する前に必ず解決策を見つけましょう。
たとえば、全員参加の会議をホストするたびに現在のビデオ会議ツールがフリーズする場合、スプリントを開始する前に新しい解決策を見つけ、全員に準備させる必要があります。
2. スタンド アップを活用して 1 日の作業に弾みをつけ、チームとつながる
スタンド アップは、アジャイル フレームワークの中核的な要素の 1 つであり、リモート チームのためにロール アウトする簡単な会議構造でもあります。
Sutherland 氏は、「リモート [ワーク] に上手く馴染まない対面の手法もありますが、スタンド アップはリモート ワークに最適です」と語っています。1 つだけ変化する要素があります。対面での会議ではなく、ビデオ会議ソフトで会議を行います。
スタンド アップはチームの朝のチェックインと考えてください。通常は、10 - 15 分の短い会議で、各チーム メンバーが「立ったまま」、進捗と取り組み中のタスクを報告します。スタンド アップは、タスクの継続、問題点の特定 (と解決策の模索)、作業の進行に役立ちます。
スタンド アップは、つながりと連携の感覚を促進する優れた方法でもあります。この感覚はすべてのチームにとって重要ですが、チームが日常的にオフィスまたは同じ場所で働いていない場合には特に重要です。
3. 不要な会議を廃止するか、見直す
スケジュールがその多くが不要であるはずの会議だらけになってしまった場合、迅速性、効率性、生産性を保つことは難しくなります。

次から次に会議が予定されているようだと、チームが迅速性、効率性、生産性を保つための時間を取れなくなってしまいます。
そのため、不要な会議の廃止と見直しが必須です。Sutherland 氏は、「時間の使い方をしっかり再評価する必要があります」と語っています。
現在の会議スケジュールを確認してみましょう。完全に廃止できる会議はありますか? もしあれば、廃止しましょう。
作業に干渉せずにチームが内容に関与できる形で見直し可能な会議はありますか? つまり、会議構造をリアルタイムから非同期に変更できますか?
非同期コミュニケーションは、即時の反応が不要なコミュニケーションのことです。チームに作業を中断させて会議に参加させるのではなく、チームのタイムラインとスケジュールに合わせて内容を消化できます。これは、高い生産性の維持に役立ちます。
たとえば、会社の情報をチームと共有するために全員参加の会議を開く代わりに、Trello カードのチェックリストまたはチーム メンバーが好きなときに閲覧できるビデオで情報を共有できますか?
不要な会議を廃止または見直しすることで、チームの時間を節約できます。(多数の会議に参加するのではなく) 重要なタスクに割く時間が増えるほど、より迅速かつ効率的に仕事を成し遂げ、結果としてスプリントがより成功します。
継続的なプロセスの改善のための定期チェックインの活用
リモート チームのパフォーマンスの向上、サポート、連携のためのアジャイル プラクティスの活用は、学習プロセスです。プロセスを成功させるには、上手くいっているもの、上手くいっていないもの、変える必要があるものを常時確認する必要があります。
Sutherland 氏は、「本当に微調整するには、定期的な評価が必要です。年 1 回 [評価] して、すべての [問題] を一気に解決するというやり方では上手く行きません。そこでアジャイル手法の出番です」と語っています。
ここで、レトロスペクティブ (または「レトロ」) が役に立ちます。
前述の通り、レトロは各スプリント終了時に行う会議です。レトロでは、チームによるスプリント目標の達成状況を含め、スプリントのすべての要素をチーム全体で確認する機会です。
Sutherland 氏は、「レトロスペクティブにおいて、重視されるのは単なる作業の進捗ではなく、チームとしての連携の方法です。そこから多くの本当に素晴らしいものが生まれます。リモートでアジャイルになるということに関して、これらのセッションでは、上手くいっているものといっていないものをそれぞれ見極めましょう」と語っています。
レトロの成功の鍵は何でしょうか? チーム全体を巻き込むことです。これは、リーダーシップがインサイトを共有する機会ではなく、チーム全体が上手くいっているものといっていないものを共有して話し合い、次のスプリントでの改善方法について連携する機会です。
各スプリント終了時にレトロを行うことで、チームは、継続的にワークフローを評価し、改善の余地を特定する機会を得られます。そして、チームとしてステップ アップして、全体的により高い生産性を得るためのインサイトが得られます。
Sutherland 氏は、「常に、改善できるものを探します。[チーム] がレトロによって悪くなった事例はまったく耳にしません」と述べています。
リモート ワークを成功させるためのアジャイル プラクティスの活用
チームがリモートで働いている場合、協力的、効果的、生産的に作業できる仕組みが必要です。リモート チーム管理にアジャイル プラクティスを取り入れる方法がわかったので、チームにその仕組みを与え、プロセスで有効に機能させるために必要なものはすべて揃いました。
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